気候変動に対する取り組み
気候変動がもたらすリスクと機会を予測し、運用方針やアセットマネジメントに
反映していくことで、長期にわたり継続して安定的な収益を生み出していきます。
気候変動がもたらすリスクと機会を予測し、運用方針やアセットマネジメントに
反映していくことで、長期にわたり継続して安定的な収益を生み出していきます。
JREは、気候変動問題を自然環境のみならず社会や産業の構造が大きく変わる転機と考えており、JREのビジネスに密接にかかわる重要な課題であると考えています。気候変動に伴い生じる変革の波を乗り越えて長期にわたりサステナブルで安定した収益を継続する為には、気候変動がJREのビジネスにもたらすリスクと機会を予測し、運用方針やアセットマネジメントに反映していくことが重要であると考えています。
2015年に採択されたパリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前の 2℃(努力目標 1.5℃)未満に抑え、21世紀後半には温室効果ガスの排出(以下「GHG排出」)を実質ゼロにすることを目標とする国際条約であり、全世界の197か国が加盟しています。この目標達成のためすでに多くの国や地域、またあらゆる産業において、GHG排出を削減する為の取り組みや規制は強化される傾向にあり、今後更なるGHG排出規制強化の可能性も議論されています。
また、IPCC報告書(注)によれば、20世紀後半以降は事実として気候変動(地球温暖化)が進行しており、そのことが熱波の頻発や、極端な大雨といった自然災害の増加をすでにもたらし始めています。こうした気候変動による物理的なリスクへの対応も、ビジネスに密接に影響する重要課題として認識されています。
(注:IPCC 1.5度特別報告書…国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による2018年公表の報告書)
2016年に発足した「気候関連財務情報開示タスクフォース(略称TCFD)」は、こうした気候変動がもたらすビジネスへの影響について、金融機関や企業がどのように情報開示をしていくかを議論し、提言を行いました。現在TCFD最終提言は世界中で多くの金融機関、企業、投資家、政府等からの賛同を得ています。
JRE-AMは、TCFDのサポーター(2019年6月署名)として、JREのビジネスにかかわる気候関連リスクと機会の評価・管理と、気候関連情報のステークホルダーへの開示を推進しています。
JRE-AMではサステナビリティ委員会(議長:JRE-AM代表取締役社長)が中心となり、ESG課題の一つとして、気候変動に関するリスク及び機会の特定、それらに対応していくための戦略について検討・決定しています。
JREは、国際機関等が公表している、地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等にはどのようなものがあるかを予想した「シナリオ」を用いて、事業にどのような影響を及ぼしうるかを検討しました。
JREは、前述した4℃、1.5℃のシナリオごとに、識別したリスクと機会の財務的影響の大きさを検証しました。財務影響定性分析では2030年(中期的展望)及び2050年(長期的展望)における影響を分析し、財務影響定量分析では2021年度営業利益をベースに2050年時点の状況を想定し分析を行いました。結果の概要は以下のとおりです。
財務的影響(小・中・大)の考え方:定量的、定性的に分析し、相対的な影響度を評価しています。
※下記の表は横にスクロールしてご覧ください
分類 | リスクと 機会の要因 |
財務的影響 | JREの取り組み | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キャッシュフローの 変化 |
区分 | 4℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
||||||
中期 2030 |
長期 2050 |
中期 2030 |
長期 2050 |
||||||
移行リスク・ 機会 |
政策・法規制 | CO₂排出量規制の導入 炭素税の導入 |
法規制対応(炭素税、クレジット購入費用)コストの増加 | リスク |
小 | 小 | 中 | 大 |
|
炭素排出関連規制の導入 健康・快適性関連法規制の導入 エネルギー規制の強化 |
環境認証取得費用の増加 | リスク |
小 | 小 | 小 | 小 |
|
||
法規制対応による物件の競争力の向上 | 機会 |
小 | 小 | 中 | 大 |
|
|||
技術 | 低炭素化技術の普及 (既存物件の環境性能の向上) |
ZEB物件の調達、既存物件のZEB化や新技術導入のための調査等にかかるコストの増加 | リスク |
小 | 小 | 中 | 中 |
|
|
省エネ設備や再エネの導入、不動産のカーボンニュートラル化の推進に伴うレトロフィット費用の増加 | リスク |
小 | 小 | 小 | 中 |
|
|||
ZEB化や環境関連工事による水道光熱費の削減 | 機会 |
小 | 小 | 中 | 大 |
|
|||
市場・評判 | 環境性能に関する社会的価値観の変化 | グリーンファイナンスによる資金調達コストの低下 | 機会 |
小 | 小 | 中 | 中 |
|
|
グリーン性能向上による資産価値の向上 | 環境認証取得やグローバルな評価機関からの高評価獲得により機関投資家の投資意欲が向上 | 機会 |
小 | 小 | 中 | 中 |
|
||
移行リスクの重要性増大 | 移行リスクが高いと評価されることにより資金調達コストが増加 | リスク |
小 | 小 | 小 | 中 |
|
||
環境性能に対する価値の向上 | ZEBやDBJ Green Building認証等、環境認証取得による物件価値向上と平均賃料の上昇 | 機会 |
小 | 小 | 中 | 大 |
|
||
テナントの環境性能に対するニーズの変化 | 保有物件の環境性能が相対的に下がり、座礁資産化することによる収益の減少 | リスク |
小 | 小 | 中 | 中 | |||
物理リスク・ 機会 |
急性 | 台風・集中豪雨・洪水・浸水の増加 | 保有物件の浸水による修繕コストや事前の対策費及び損害保険料の増加 | リスク |
小 | 中 | 小 | 小 |
|
保有物件の浸水による営業機会の損失 | リスク |
小 | 中 | 小 | 小 | ||||
浸水リスクの高い物件の資産価値減少 | リスク |
小 | 小 | 小 | 小 | ||||
レジリエンスに強いポートフォリオであることによる、市場競争力の一層の向上 | 機会 |
小 | 中 | 小 | 小 | ||||
慢性 | 平均気温上昇の進行 | 冷房需要の増加によるコストの増加 | リスク |
小 | 中 | 小 | 小 |
|
|
海面上昇の進行 | 海面上昇への対策にかかるコストの増加 | リスク |
小 | 小 | 小 | 小 |
|
略称は次の通りです。EMS:環境マネジメントシステム/DDプロセス:デューデリジェンスプロセス
移行リスクの影響が大きいが、省エネ改修・ZEB化等様々な対策効果により営業利益増加
高解像度画像はこちらをご覧ください。
浸水リスクの影響が大きいが、浸水対策によりリスク回避し、営業利益維持
高解像度画像はこちらをご覧ください。
※下記の表は横にスクロールしてご覧ください
分類 | リスクと 機会の要因 |
キャッシュフローの 変化 |
区分 | ※単位:億円 | 算定の説明 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
|||||||
(本算定での対応) | ||||||||
長期 2050 |
長期 2050 |
|||||||
移行リスク・ 機会 |
政策・法規制 | CO₂排出量規制の導入 炭素税の導入 |
[1] | ◆法規制(炭素税)対応コストの変化(事業活動に課される炭素税コスト) | リスク |
-0.21 | -15.86 | 1.5℃シナリオでは炭素税が大幅に上昇 |
対策効果 |
0 | 15.86 | 省エネ改修、再エネ電力導入、燃料由来GHGのゼロエミッション化により炭素税課税を回避 | |||||
技術 | 低炭素化技術の普及 (既存物件の環境性能の向上) |
[2] | ◆ネットゼロ達成に向けた非化石証書購入コスト | リスク |
0 | -3.50 | 1.5℃シナリオでは、使用する電力をすべて再エネ化(非化石証書) | |
対策効果 |
0 | 2.10 | 1.5℃シナリオではさらなる省エネ改修を実施し、非化石証書の調達コストを圧縮 | |||||
[3] | ◆ネットゼロ達成に向けた燃料由来GHGのゼロエミッション化のコスト | リスク |
0 | -0.59 | 燃料由来GHGをゼロエミッション化する(炭素クレジット) | |||
対策効果 |
(0) | (1.98) | 炭素税課税の回避 ※法規制対応コストへの対策効果([1])に含む |
|||||
[4] | ◆省エネ改修、ZEB改修等レトロフィットにかかるコストの増加 | リスク |
0 | -21.10 | 1.5℃シナリオの世界観としてポートフォリオの85%をZEB Ready とするための改修コスト |
|||
対策効果 |
0 | 22.89 | 改修により光熱費が大幅に減少 | |||||
市場・評判 | 環境性能に関する社会的価値観の変化 | [5] | グリーンファイナンスによる資金調達コストの低下 | 機会 |
0 | 0.30 | サステナビリティ・リンク・ローンによる資金調達とSPT達成による金利優遇 | |
環境性能に対する価値の向上 | [6] | ◆環境認証の有無による賃貸収入の増減 | リスク |
0 | 0 | 1.5℃シナリオでは認証取得率100%達成 | ||
対策コスト |
0 | -0.26 | 環境認証の取得コスト | |||||
対策効果 |
0 | 30.16 | 環境認証があることによる賃料プレミアム | |||||
テナントの環境性能に対するニーズの変化 | [7] | 対策を取らず座礁資産化することによる賃貸収入の減少 | リスク |
0 | -64.58 | 対策を取らず座礁資産化することによる賃貸収入の減少 (CRREMの分析結果を使用) |
||
対策効果 |
0 | 64.58 | 再エネ電力導入、燃料由来GHGのゼロエミッション化等によって座礁資産化を回避し賃貸収入の減少を回避 | |||||
物理リスク・ 機会 |
急性 | 台風・集中豪雨・洪水・浸水の増加 | [8]-1 | 保有物件の浸水による賃貸収入の減少 (想定被害発生時) |
リスク |
-16.37 | -14.03 | 想定最大規模の水害発生時に想定される賃貸収入の減少 |
対策効果 |
16.37 | 14.03 | 計画的に実施している浸水対策により、施設の被害を回避 | |||||
[8]-2 | 保有物件の浸水による施設の修繕コスト (想定被害発生時) |
リスク |
-4.07 | -3.48 | 想定最大規模の水害発生時に想定される浸水被害修繕コスト | |||
対策効果 |
4.07 | 3.48 | 計画的に実施している浸水対策により、施設の被害を回避 | |||||
慢性 | 平均気温上昇の進行 | [9] | ◆夏季気温上昇による電力料金の増加 | リスク |
-0.36 | -0.16 | 平均気温上昇による電力消費量の増加 | |
対策効果 |
0 | 0.08 | 省エネ改修、ZEB改修により電力消費量を削減 |
◆ 将来のAUM増を反映させたもの
「リスク」には物件のZEB化など積極的な対策のためのコストも含む
本試算は、JREの事業範囲の一部について分析したものであり、全体の影響を評価したものではありません。日本およびグローバルの政策動向等を踏まえ、試算対象項目における前提条件の考え方や対象項目の拡大等、更なる分析の深化に向け継続的に検討していきます。
本試算は、JREの運用実績等を踏まえ、主要機関が提示するシナリオや文献等の各種パラメータを参考に試算した年間の影響額であり、その正確性を保証するものではありません。また想定する対応策についても、試算上の想定であり、実行を計画・決定したものではありません。
CRREM(Carbon Risk Real Estate Monitor)は、パリ協定の2℃、1.5℃目標に整合するGHG排出量の2050年までのパスウェイ(炭素削減経路)を、欧州、北米、日本を含むアジア・太平洋地域の計44か国(2023年1月時点)の不動産の用途毎に算出し、公表しています。分析対象とする保有物件のパフォーマンスとパスウェイとを比較することで、物件単位の座礁資産化の時期及び炭素コストを算定し、これらに対処するために必要な改修規模を把握することで運用改善への活用が期待できるツールです。
JREでは保有する物件(2022年3月現在)を対象として、CRREMのリスク評価ツールを用いて、ポートフォリオの潜在的な座礁資産化リスクの分析を行いました。分析に当たっては、アジア太平洋版ツール(ver. 1.22)およびグローバルパスウェイ(ver. 2.01)をベースとしています。今後はこの分析結果を物件の改修・売却等を含む事業戦略に活かしていきます。
気候変動対策としての政府・自治体による規制の強化は既に現実の動きとなっており、今後パリ協定の1.5℃、2℃目標や日本の2050年カーボンニュートラル達成に向けた政策・法規制が強化された場合、国内でもGHG排出規制、建物の省エネ性能規制、炭素税導入等の様々なかたちで不動産ビジネスへの影響が生じることが危惧されます。
また、脱炭素社会への移行が進むと、オフィスビルのテナントとなる企業についても、入居先でのエネルギー消費やGHG排出を削減すべきインセンティブが一層生じてくるものと推定されます。そうしたインセンティブが、オフィス賃貸市場の状況を変化させる可能性も想定されます。
金融機関や投資家においてもその投資先の気候関連リスクを投融資判断に組み入れる動きが生じつつあり、事業の資金調達に影響を与える可能性があります。
JREでは、こうした気候変動の「移行リスク」に対して、GHG排出削減やエネルギー効率改善のためのグリーンプロジェクト、グリーンビル認証の取得等、様々な対策と具体的アクションを推進しています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
今後総量削減規制、また炭素税等のより一層厳しい規制が日本でも導入される可能性があります。JREではポートフォリオ全体での削減目標を設定しています。(2030年度までに80%削減/2019年度比)
気候変動リスクへの危機感・意識の高まりは不動産業界のみならず世界中あらゆる業種に広がりつつあります。オフィスビルのテナントについても気候変動への取り組みを重要課題に掲げる企業が増えてきています。JREでは市場でこうした傾向が進むと、CO₂排出の多い物件はその価値が低下していく、逆にエネルギー効率の高い物件はその価値を高めていく可能性が高いと考えます。
JREでは2030年度までにポートフォリオ全体で、原単位を平均で12㎏-CO₂/m²以下まで低減、またZEB(Net Zero Energy Building)5~10棟の保有、を目標としています。
より高いエネルギー効率性を保つことで各物件の市場価値を保ち、個別の物件が「座礁資産(Stranded Asset)」化することを防ぐと同時に、ZEB等の競争力の高いグリーン性能をテナントにアピールし、より高い収益獲得を目指します。
日本は元来地理的な条件から毎年夏季は台風や大雨、冬季には積雪を経験します。地震と併せて考慮すると大変に自然災害の多い国と言えます。加えて、地球規模の気候変動の進行に伴い、こうした自然災害がさらに頻発化、激甚化していく可能性があり、こうした災害による財務的影響の増大が、主たる気候変動の「物理リスク」として、全世界的に危惧されています。
JREは、災害によってポートフォリオの収益性が毀損されるリスクを低減するため、災害時の被害を最小限にとどめ、災害の激甚化に対するレジリエンシー(強靭性)を高めるための戦略を実施しています。
日本は地理的要因から台風や大雨による浸水等に遭遇する機会が多く、それらへの対応としてビルのハード面において開口部の止水板設置、土嚢・止水シートの準備、また地下の重要設備室扉の防水化等を行っています。
国内トップクラスのPM会社により災害の種別に合わせ適切な災害対策と訓練が実施されています。
またテナントとの防災協議会の実施やBCPマニュアルの配布、またJRE-AMとPM会社間での被災状況把握システムの導入等、ソフト面においても適切な対策が取られています。
日本は自然災害の多い国です。この10年でも、2011年の東日本大震災(地震、津波)、2018年の西日本豪雨(大雨、浸水)、また北海道胆振東部地震(地震、地滑り、広域停電)、2019年の台風15号(強風、家屋毀損、長期にわたる広域停電)、台風19号(大雨、河川決壊、浸水)など多くの激甚災害が起きています。
これらの災害に対してJREのポートフォリオも無縁ではなく、多くのビルが何らかの災害に遭遇していますが、建物の耐性およびPM会社の優れた対応によりハード面、ソフト面の両方において災害によるダメージは限定的です。
災害が起きても建物の復旧に要した期間はほぼ全てのケースで1週間以内、また補修に掛かった費用はほぼ全てのケースで通常の補修+αレベル(概ね1千万円以下)となっています。(下図参照)
過去の実績において、上記に述べた日本特有の自然災害のもとにあっても、JREのポートフォリオは十分な耐性(レジリエンス)を有していることが証明されています。
JREでは、日頃からPMによる定期的な建物安全管理チェック、各種災害訓練、防災用品・食料の備蓄、またテナントと協働での防災訓練・防災協議会等を通じて様々な災害やアクシデントに対応するハード・ソフト面を強化しています。
被災によりビルが運営不能(閉館等)となったケースは下記の1件のみとなります。
2018年夏季に起きた北海道胆振東部地震に伴う広域停電(約2日間)により、8・3スクエア北ビルが閉館となりました。当閉館はあくまで停電の影響によるもので、建物被害はありませんでした。当日は現場スタッフの正確かつ迅速な対応により館内テナント・来館者のスムーズな全員退避を実現し、当閉館による収益の毀損もありませんでした。
また停電の影響で現地の情報収集が難しい状況の中、JREでは被災状況把握システムが正常に機能し現地の対応状況をタイムリー且つ正確に把握し、被災状況のリリースを行うことが出来ました。
ここ数年日本列島周辺では台風の大型化が進んでいます。また台風や大雨により河川氾濫・浸水が多発しています。これらの浸水被害は各自治体のハザードマップにより予測がなされており、実際の災害発生と照らし精度が高いと言われています。
JREのポートフォリオにハザードマップに於ける浸水被害の想定状況は下図グラフの通りです。
「浸水被害の想定なし」および「浸水0.2m〜0.5mまで(軽微な想定)」を合わせて全体の8割超(82%/棟数ベース)となっています。
残る2割弱(18%)の物件が0.5m以上の浸水想定となっていますが、全てのビルにおいて止水板設置等のハード面の準備、止水訓練等ソフト面での備えを行っています。
気候変動は、事業リスクだけでなく、同時に社会経済の変革と新たな価値創出のためのビジネス機会をもたらします。REITの成長機会である、①内部成長、②外部成長、③財務戦略、のそれぞれの側面において、JREは以下のバリューアップ戦略を進めています。
JREでは運用会社内にエンジニアリング機能(CM室)を保有し、70棟以上のオフィスのCAPEX、修繕工事を効率的にコントロールしています。また国内トップクラスの設計事務所である三菱地所設計のエンジニアリングチームと連携し、建物技術診断、長期修繕計画のレビュー、コストコントロール等を行っています。
JREではCO₂排出量を仮想的にコスト換算することで、環境負荷の低減を促進する仕組みであるインターナル・カーボンプライシング制度を導入し、2050年ネットゼロ達成につながる省エネ投資を推進しています。
内部炭素価格 | 20,000円/t-CO₂ |
---|---|
対象案件 | CO₂排出量削減を伴う省エネ改修工事 |
適用方法 | 保有ビルにおける省エネ改修工事(空調更新・LED化等)において、工事の実施により削減が見込まれるCO₂排出量を把握できる場合、内部炭素価格を適用した換算額を算出し、当該換算額を工事実施判断の参考とする。 |
JREではCO₂排出量について2030年度までに80%削減とする目標を設定しています。
削減の内訳については上記棒グラフの通りです。リノベーションやZEB化といった改修工事関連を主軸として20,000t-CO₂以上の削減を見込んでいます。
JREではポートフォリオ全体の改修等、技術面による削減の可能性と検証業務につき三菱地所設計に委託致しました。豊富なリノベーション実績を持つ同社ならではのシナリオ分析と併せ、机上のシミュレーションのみならず現場の実査も踏まえ検証を行いました。検証の結果は以下の通り。(同一物件での比較)
※下記の表は横にスクロールしてご覧ください
ケースⅠ 同容量 |
ケースⅡ サイズダウン |
ケースⅢ 更なる削減 |
|
---|---|---|---|
削減量(t-CO₂) | 21,944 | 26,667 | 28,637 |
2030年度までの エキストラコスト |
ほぼ 変わらず |
約11億円 | 約32億円 |
JREは上記結果を踏まえ、ケースⅡとケースⅢの中間のイメージで取り組んで参ります。個別の物件の改修工事実施に当たっては、単なる老朽化設備更新・エネルギー対策工事のみならず、テナント・顧客のニーズを踏まえながら総合的なバリューアップにより更なる収益性の向上も図って参ります。(事例紹介参照)
LED化工事について
JREでは全ポートフォリオについてLED化工事実施を既に戦略・予算化し、順次取り進めています。
既存蛍光管については今後メーカーにて製造中止となる可能性が高く、LEDへの更新をしないことの方がリスクは大きいと考えます。尚、2030年度迄の未実施予算は約70億円となります。
詳しくは三菱地所設計によるCO₂削減検証レポートをご覧ください。
JREの年間CO₂排出量は約10万トン、内電気使用量の占める割合は約78%です。(2018年度実績)
総電気使用量は約2億kwh。仮に使用量35%削減した場合の削減コストは以下の通りです。
年間2億kwh × 35%(削減率) × @16.8円/kwh ≒ 約11.76億円/年
上記の内約半分はテナント使用分となり、その分を割り引いても5億円以上が利益に貢献します。
JREは、保有ビルの電力をRE100対応※の再生可能エネルギー由来(以下、再エネ電力)に随時切り替えを進めています。これにより、ビルとしてのCO₂排出はテナント使用分も含めてゼロになります。JREが100%所有し、JREのみで意思決定が完結する物件全てにおいて、2024年9月末時点で切り替えが完了しています。その他のビルにおいても、積極的に再エネ電力の導入を進めていきます。
企業が事業で使用する電気を100%再生可能エネルギーとすることにコミットする協働イニシアティブ。
政府と電気事業低炭素社会協議会は、2030年でのCO₂排出係数目標0.370kg-CO₂/kWh(2015年計画値)を掲げています。
(2018年実績 0.463kg-CO₂/kWh)
JREでは今後の社会情勢等を踏まえ、エネルギーミックスによる削減の寄与については保守的に見て参ります。
個別ビルのエネルギー消費効率化は、GHG排出削減という移行リスクへの先行的対応に加え、光熱費削減によるNOIの向上および環境面でのニーズを持つテナントへの訴求力の向上という収益改善の機会にもなりえます。
JREでは、LED化推進による光熱費コスト削減、また個別のグリーン改修プロジェクト(例:銀座三和ビル、JRE芝二丁目大門ビル等)を推進しています。こうした改修プロジェクトに際しては、テナントとの協議の上でグリーンプレミアム(賃料増額やグリーン協力金の収受)を実現し、GHG排出削減と収益性の向上の両立を実現しています。
当初想定よりも高い効果を得ており、結果は以下の通りとなっています。
エネルギー使用量▲44.3%
(※2020年と2017年の年間実績対⽐)
水消費量▲49.5%
(※2020年と2017年の年間実績対⽐)
CO₂排出量▲32.8%
(※2020年と2017年の年間実績対⽐)
平均賃料単価17.5%上昇
(※2021年3⽉末時点内定ベースと
2018年3⽉末時点実績の対⽐)
テナント満足度約80%に向上
(※改修後事務室、共用廊下、
トイレの機能について)
JREでは2030年度までにZEBの保有5~10棟を目標としています(Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedを含む)。2019年度以降、株式会社三菱地所設計との協働により、既存ビルの改修によるZEB化について検証を開始しており、2021年にはJRE東五反田一丁目ビル、2022年には大同生命新潟ビル、2023年にはJRE茅場町二丁目ビルにてZEB Readyを取得し、JRE代々木一丁目ビルにてZEB Orientedを取得しました。これらは既存ビルにおける改修工事を前提とした設計段階での申請によるZEB取得となります。JREは今後もKPIの達成に向けてZEB化の取り組みを継続していきます。
ZEB取得物件の一覧についてはこちらをご覧ください。
詳しくは三菱地所設計による検証レポートをご覧ください。
JRE-AMのスポンサーである三菱地所と連携し、物件交換や相互売買により築古ビルから築浅でエネルギー効率の高いビルへの入替えを実現し、脱炭素社会への適応と、収益性を両立したポートフォリオの構築を進めています。
スポンサーとの物件入替えの例:
2018年1月 譲渡:渋谷クロスタワー(建物)←→ 取得:フロントプレイス日本橋
本売買は2017年度中の契約引き渡しにつき、1年間のデータ比較は以下の期間で算出しています。
渋谷クロスタワー⇒2016年度のCO₂排出量 & 水消費量 フロントプレイス日本橋⇒2018年度のCO₂排出量 & 水消費量
気候変動による財務的な影響が認識されていくにつれ、金融機関、投資家のグリーンファイナンスへの志向がより強まっていくものと思われます。グリーンな投融資先として有利な資金調達の機会を得るため、JREではグリーンボンド・フレームワークを整備し、グリーンファイナンスの展開を進めています。
さらに、客観的に検証可能なグリーン性の確保のため、DBJ Green Building認証、BELSなどの認証制度の活用や、環境・社会へのポジティブなインパクトの評価・測定の体制を整えるともに、外部へのレポーティングの充実を進めています。
2018年11月にはグリーンボンドとして第12回投資法人債(ジャパンリアルエステイト・グリーンボンド)を発行しました。
JREは本グリーンボンドの発行について、2020年環境省の主催する『ESGファイナンス・アワード』を受賞しました。
(詳細はプレスリリースをご覧ください。)