トップメッセージ

J-REIT業界のリーディング・カンパニーとしてESGに関する取り組みを推進し、
全てのステークホルダーにとっての最善と投資主価値の最大化を目指します。

トップメッセージ

ジャパンリアルエステイト
アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
小島 正二郎

サステナビリティ向上における長期的視点の重要性

コロナ禍で混乱した社会経済活動が正常化しつつある一方で、ロシア・ウクライナ戦争は長期化の様相を呈しています。これが従来からの主要国間の対立構造に拍車をかけて「世界の分断」がいっそう深まりました。平和や人道に関する懸念は言うに及ばず、エネルギーや食料をはじめとする資源供給への悪影響や気候変動対策の停滞が危惧されています。また、世界中で発生している異常気象を由来とする自然災害も減る気配はありません。「数十年ぶり」や「観測史上で最高の」といった表現にもさほど驚くことはなくなりました。

こうした不安定な情勢下ではありますが、我々はサステナビリティ(自然環境や社会システムの維持)の向上に対する取り組みを力強く継続しています。むしろ、世界中で多くのリスクが顕在化する様子を目の当たりにして、長期的な視点で課題と向き合うことの重要性を改めて強く認識していると申し上げるべきでしょう。

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ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
小島 正二郎

先日、新聞を読んでいると「ESGブーム終幕」という見出しが目に飛び込んできました。驚いて記事を読み進めると、資本市場においてESGはやがてブームではなくなり、企業評価に取り入れることが当然になるだろうという内容でした。私も同感です。もはや、環境、社会、ガバナンスに配慮する理念そのものに無関心な方々は少数になっているとしても、「ESGを重視した行動は経済的マイナスを伴う」という考え方はまだ根強いと思います。確かに、サステナビリティ向上への積極的な取り組みは短期的なコストを伴います。しかし、結果として将来のリスクが低減し機会が増大することが見込めれば、それはコストではなく投資であると考えるべきです。

翻って、JREの基本使命は「質の高いオフィス空間を提供するとともに長期的な投資機会を提供して投資主価値の最大化を果たすこと」です。長期的視点が念頭にあることがお分かりいただけると思います。この基本使命の根底にある考え方は、将来に向かって備えるという点でサステナビリティの向上と高い親和性を持っています。

JREによるESG推進の先進的な取り組み

我々が社内に「ESG推進室(現サステナビリティ推進部)」を立ち上げたのは2018年のことです。これはJ-REIT運用会社として業界における先駆けでした。同年にPRI※1に署名し、翌2019年にはJ-REITとしては初めてTCFD※2提言に沿った情報を開示しています。

2020年には気候変動リスクへの対応をさらに推進するために、CO₂削減の数値目標をはじめとする環境KPIを発表しました。2022年にはこれら目標を上方改定しましたが、新たな目標では2019年度を基準として2030年度までにCO₂排出量を80%削減、2050年度までにネットゼロを目指しています。尚、この新目標は科学的根拠に基づいた目標設定を促す国際的取り組みであるSBTi※3の認定を取得しています。また、TCFDのシナリオ分析においては、2021年に開示した財務影響定性分析を更に発展させ、2023年には定量的な分析結果を開示しました。

建物で使用する電力は将来的に100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しており、これを促進する国際的取り組みであるRE100に加盟しています。また、建物のエネルギー消費量収支をゼロに近づけることを目的としたZEB認証制度※4において、JREとして3棟目及び4棟目となる認証を2023年に取得しました。

資金調達における活用も積極的に進めており、サステナビリティ・リンク・ローンによる借入は8本を数えます。これは、我々が設定した野心的なESG目標の達成に応じて金利が軽減される仕組みの融資です。

以上のような施策によって、JREはESGへの取り組みが最も先進的なJ-REITの一つであるとの評価をステークホルダーの皆様からいただいています。

グローバルなESG基準を見据えた「選ばれるオフィス」の提供

私は2022年4月に現職に就きましたが、その前の職責ではグローバルな不動産投資運用会社のマネジメントに関わっていました。その際に、北米、欧州、アジアの各地に所在するグループ会社のESG対応についての比較調査に携わったことがあります。投資家はそれぞれの地域や国における経済や金融の状況を分析した上で投資先を決めているわけですが、近年になってESG対応の評価が非常に重要になっていることを再認識しました。この分野で最も議論が進んでいるのは欧州であり、日本を含むアジアには残念ながら数年の遅れがあります。欧州の投資家は高いESG基準を持っており、投資対象として魅力的であっても環境対応が不十分な不動産には投資をしません。加えて、運用会社のガバナンス体制についての基準も厳しく設けています。JREの投資主の外資比率は約3割にのぼりますので、我々にとっても諸外国の投資家の視点は極めて重要です。

ESG基準は投資の側面だけではありません。例えば英国では、売買や賃貸の対象となる建築物に対してエネルギー効率証明書の取得が義務付けられており、その証明書における省エネランクが一定以下の建物は原則として新たな契約が締結できなくなると定められています。このような規制の流れはやがて世界中に拡散していくことでしょう。そもそも規制以前に、ESG基準によって自らが入居する建物を選別する動きが欧米企業だけでなく日本企業においても頻繁に確認されるようになりました。環境性能や従業員の健康と快適性に配慮した建物を選別することが、企業の事業戦略上ますます重要になってきているのです。各種認証の取得だけではなく、ESGの観点で優れた不動産であることを分かりやすく伝えていくことの必要性が高まっていると感じています。

全てのステークホルダーにとっての最善と投資主価値の最大化を目指して

最後に改めて申し上げたいのは、我々が目指しているのは社会からの期待に応えることだけではないということです。JREの事業活動に関連したサステナビリティ向上によって、建物の入居テナント、運営や管理に関わる方々、地域の方々、そして運用を担う同僚などあらゆるステークホルダーにとっての最善を目指し、延いては投資主価値の最大化を実現することがゴールです。

ESGウェブサイトでは、こうした考えに基づくJREの取り組みを詳しく紹介しています。皆さまのご理解を深めていただくための一助になれば幸いです。

  • 国際連合の責任投資原則
  • 国際機関である金融安定理事会による気候関連財務情報開示タスクフォース
  • 科学的根拠に基づいた目標設定を促す国際的取り組み
  • 国土交通省が主導する建築物の省エネルギー性能に特化した、第三者による認証制度

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