トップメッセージ

J-REIT業界のリーディング・カンパニーとしてESGに関する取り組みを推進し、
全てのステークホルダーにとっての最善と投資主価値の最大化を目指します。

トップメッセージ

ジャパンリアルエステイト
アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
小島 正二郎

オフィス市場における「質への逃避(Flight to quality)」

私たちの基本使命の一つは、「質の高いオフィス空間を提供すること」です。現在、世界のオフィス市場で「質への逃避(Flight to quality)」の傾向が強まっています。オフィススペースの需要が、より質の高い物件に集中しているのです。特に欧米の主要マーケットでは、市場全体の空室率が高いにもかかわらず、新しく建設されたプライムビルにはほとんど空室が見られません。一方で、機能が劣る古いビルは、条件にかかわらず入居希望テナントを集めるのが難しくなっています。

これまでも、景気の変動によって建物のグレード間でシフトが生じることはありました。オフィス市場の需給が緩んで賃料が下がると、テナントはグレードの高いオフィスに移りやすくなります。逆に、空室率が低くなると、グレードがそれほど高くないビルでも入居希望が増えます。こうして、高グレードのビルは賃料を調整して入居率をコントロールし、低グレードのビルは市場の調整役として機能してきました。しかし、現在起きているグレード間のシフトには、こうした従来の景気循環とは異なる要因が影響しています。

トップメッセージ

ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
小島 正二郎

現在の「質への逃避」のきっかけは、コロナ禍によってIT技術の導入が加速し、オフィスに求められる機能が変化したことです。出社とリモートを組み合わせたハイブリッドワークが定着し、オフィスは社員同士がコミュニケーションを図る場としての重要性が増しました。また、ビデオ会議に対応した設備やリフレッシュ用の休憩スペースなど、以前はそれほど注目されなかった要素も重視されるようになっています。一方、全員分のワークデスクや紙資料を収納する大きなキャビネットを置く必要はなくなりました。このように、コロナ禍を経てオフィスに求められる要素は大きく変化しているのです。

選ばれているのは「環境や働く人に配慮したビル」

より質の高いスペースを求めるもう一つの要因は「サステナビリティ」です。数年前から徐々に進んでいた「環境にやさしいビル」を求める動きが、コロナ禍を経て一気に顕在化しました。多くの企業や団体がサステナビリティポリシーを掲げる中、環境に配慮したオフィスビルが入居先として選ばれるのは自然な流れです。特に外資系を含む大企業では、オフィス環境の条件としてグリーンビルディング認証を求めるケースが増えています。

オフィスワーカーのウェルビーイング(Well-being)の観点から、アメニティに優れたオフィスが選ばれる傾向も強まっています。ある調査によると、ラウンジや屋上テラス、フィットネス施設、託児所など、現代的なアメニティを備えたビルは賃料が高く、空室率は低いことが確認されています。この他にも、オフィス内の緑化やカフェスペース、リフレッシュスペースの設置、会議スペースの増設、ゆとりのあるレイアウトなど、働く人々の心身の健康を保つための配慮は、オフィススペースにとってますます大切な要素になりました。慢性的な人手不足の中で、シニア世代や子育て世代を含む優秀な人材を引き寄せるためにも、働きやすいオフィスの必要性が強く認識されるようになったのです。

さらに、温室効果ガス排出量の削減や気候変動への対策として、政府からの働きかけも強まっています。この分野で先行している欧州では、各国で建物の省エネルギー性能証書の取得が義務化され、その証書の等級に応じて売買や賃貸などの取引が制限される動きが進んでいます。米国では、例えばニューヨークのマンハッタンで、市の規制により温室効果ガスの排出基準が段階的に厳しくなり、新築の建物には太陽光発電システムの設置や緑化が義務付けられています。日本でも、東京都において環境確保条例に基づく「キャップ&トレード制度」により、約1,200の対象事業所に対してCO₂排出量の総量削減が義務付けられています。このように、環境への配慮はもはや建物存続の必要条件になりつつあります。

つまり、「質への逃避」は単にテナントのニーズが賃料の高いビルにシフトしているという現象ではありません。「環境や働く人に配慮したビル」が選ばれているのです。

JREによるサステナビリティ推進の先進的な取り組み

当社がESG推進室(現サステナビリティ推進部)を立ち上げたのは2018年のことです。これはJ-REIT運用会社として業界における先駆けでした。その後、以下のような取り組みを進めてきました。

2018年
  • PRI※1に署名
2019年
  • J-REITとしては初めてTCFD※2提言に沿った情報を開示
2020年
  • CO₂削減目標を含む環境KPIを発表
2021年
  • TCFDシナリオ分析として財務影響評価の定性分析結果を開示
2022年
  • 環境KPIを上方改定(2019年度を基準年として、2030年度までにCO₂排出量の80%削減、2050年度までにネットゼロ)
  • 上記環境KPIに関して、科学的根拠に基づいた目標設定を促す国際的取り組みであるSBTi※3のニアターム目標認定を取得
  • RE100※4にJ-REITで初めて加盟
2023年
  • TCFDシナリオ分析として財務影響評価の定量分析結果を開示
  • SBTiのNet-Zero目標認定を取得

最近の取り組みとして、建物のエネルギー消費量をゼロに近づけることを目的としたZEB認証制度※5において、2024年3月末時点で4棟の認証を取得しています。また、資金調達の面では、サステナビリティに関連する目標の達成と金利が連動するサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を積極的に導入しています。2023年度には各金融機関との間でSLLに取り組む際の汎用的なフレームワークを策定し、これに基づいて前年の2倍となる10本のSLL調達を実施しました。

これらの施策により、JREはサステナビリティへの取り組みが最も先進的なJ-REITの一つとして、ステークホルダーの皆様から高い評価をいただいています。

全てのステークホルダーにとっての最善と投資主価値の最大化を目指して

数年前までは、こうした当社のサステナビリティ向上への積極的な取り組みに対して、それがどのように経済的リターンに結びつくのかを問われることが少なくありませんでした。しかし、最近そうした声は聞かれなくなりつつあります。時代が私たちの取り組みに追いついてきたのです。

冒頭で、私たちの基本使命の一つが「質の高いオフィス空間を提供すること」だとご紹介しましたが、もう一つの基本使命は「長期的な投資機会を提供して投資主価値の最大化を果たすこと」です。私たちが目指しているのは、JREの事業活動を通じてサステナビリティを向上させることによって、建物の入居テナント、運営や管理に関わる方々、地域の方々、そして運用を担う同僚など、すべてのステークホルダーにとっての最善を追求し、延いては投資主価値の最大化を実現することです。

ESGウェブサイトでは、この理念に基づくJREの取り組みを詳しく紹介しています。皆さまのご理解を深めていただく一助となれば幸いです。

  • 国際連合の責任投資原則
  • 国際機関である金融安定理事会による気候関連財務情報開示タスクフォース
  • 科学的根拠に基づいた目標設定を促す国際的取り組み
  • 事業で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力とすることを目指す国際的な協働イニシアティブ
  • 国土交通省が主導する建築物の省エネルギー性能に特化した、第三者による認証制度

トップメッセージ